原研哉

これは同仁斎という義政の書斎ですが、彼の当時の感性を端的に物語っています。今の和室といわれるものの源流が、全てここに集約されていると言われています。言わば、和室の原型ですね。畳敷きの四畳半ですが、これ以前は、畳はまだ床に敷きつめられてはいなかった。畳は板の間の一部に置かれて、畳の縁には段差があったんです。 障子もほぼ完成されています。障子は完壁な面光源になって、直射日光は差さない。デスクトップは帳台とよばれるもので、書き物をするところですが、すばらしいのはデスクトップの面に接して全面に障子があって、これがすっと開くんですね。開くと庭の景色がちょうど掛け軸のようなプロポーションで切りとられてくる。帳台の左には違い棚があって、渡来ものや本などをここに飾ったりするわけです。 向かって左手と、カメラ側も襖です。襖、襖、障子、障子、あとは畳と帳台と違い棚。すごく簡素できれいです。本当に簡素極まりない。これが究極の和室です。以後の和室は、数寄屋にしろ書院づくりにしろ、少なからずこういうものの影響を受けているわけです。